中古レコード屋の店主 里葉風流の「レア盤発掘に王道なし」 #009 番外編:「赤と黒のビートルズ」~ヒマ人里葉のオデオン黒盤奮闘記1

 若い世代にとっての「赤盤・青盤」はビートルズのベスト盤として同列ですが、ビートルズ・コレクターにとっての「赤盤・黒盤」は光と影にも相当します。ビートルズの赤盤。コレクターが眩いばかりの光をこの赤い円盤に感じ始めたのは、いつ頃からのことでしょう。

 私が中学生でビートルズのシングル盤を聴き込んでいた60年代のど真ん中には、赤盤というものを特に意識したことはありませんでした。高校に入ってLPを買うようになり、初めて「ビートルズのLPは盤が赤い」ことに気付いたように思います。ただ「ふ~ん」くらいのもので、ひたすら既聴感のない音楽に胸をときめかせる日々でした。個人的にコレクションというものを意識し始めたのは、大学に入ってしばらくしてビートルズのディスコグラフィー本のようなものが出てからでした。ただそれも「ビートルズのシングルを初回オデオン盤で全部揃えてみよう」という、今から考えれば実に他愛もないお遊びのようなコレクションで、盤が赤かろうが黒かろうがまったく関係ありませんでした。

 赤盤が意識され始めたのは、間違いなく海外の需要によるものです。ビートルズの解散後、70年代になって赤盤に注目し始めた欧米のコレクターは、原盤を欲しがる日本のコレクターとの赤盤トレードを開始します。LPでは既に『ヤァ!ヤァ!ヤァ!』などの日本独自ジャケに人気が出ていましたが、海外での赤盤への拘りは凄まじく、同じ独自ジャケの来日記念盤『ステレオ!これがビートルズ』でも黒盤だったらトレード対象から外されたと聞きました。80年代の日本盤シングル・ブームや90年代に入っての帯フィーバーで赤盤人気も若干落ち着いたかに見えましたが、『ビートルズ物語』のアップル赤盤が英国のコレクターにとんでもない値段で売れたようで、まだまだ海外での赤盤信奉は我々日本人が考えている以上に根が深い気がします。

 海外からの影響でその後日本でも赤盤人気は定着し、レアなビートルズの赤盤シングルにはネット・オークションでも高値が付いているのが現状のようです。ただ私がLPで赤盤の存在を意識したように、「ビートルズのオデオン盤はシングルでは赤、LPでは黒が珍しい」程度の認識はこれまでもありました。しかしながら、LP図鑑出版に向けての調査で見えてきた「66年以前の東芝LPは基本的に赤盤しか存在しない」という事実は、長年に渡って60年代のアナログに執着してきた私のような人間にとっては大きなショックでした。それによって明確に浮かんできたもの。外人さえもトレードから外した66年の来日記念盤『ステレオ!これがビートルズ』の黒盤はいったい何だったのか。赤盤の影になって存在が消えていたこのレアな黒盤の正体とは・・・。

vol.1

里葉風流(さとばふうる)