中古レコード屋の店主 里葉風流の「レア盤発掘に王道なし」 #016 念ずれば通ず ~近藤よし子/七色仮面の歌<キングEC-45>

 常連客の営業マンKさんとは古くからの付き合いです。Kさんは購入したレコードも聴いてみてイマイチ好みに合わなかったら意外とあっさり売ってしまう習性があるようで、そういう意味では音楽フリークではあってもコレクターとは言えないかもしれません。昔はネットとかなくて、飽きたものやどこからともなく入手したレア盤をよく売りに来てくれました。(最近はヤフオフ等でめっきり減りましたが)

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 ジスボーイをオープンして2~3年の頃だったと思います。年末で慌ただしかったある日のこと、KさんがLP数枚を持ち込んだことがありました。取引先を訪問したらちょうど倉庫の片付けの最中で、「レコード出て来たけど、好きだったよね? どうせ捨てるから欲しいものがあれば持って行っていいよ。」と声かけられたらしいのです。LPは数枚だったのですが、ブルコメの『クリスマスをエレキ・ギターで』の帯付などちょっぴりいいものがあって、結局6~7千円で買取った記憶があります。

「他には何かなかった?」
「自分で聴いてみたいレコードが数枚と、あとは子供テレビ番組の古そうなドーナツ盤がありましたけど、「月光仮面」とかの有名なのじゃなかったので置いて来ました。」
「ええ~!?それってひょっとして「七色仮面」とかじゃないよね?」冗談半分で絶対有り得ないタイトルを口にすると、
「……。そんな名前だった気もします。」
「エエー!!それ絶対貰ってきてよ!状態によったら4~5万は出すから!」
「分かりました。明日また行く便があるので寄ってみます。」

 Kさんは非常に落ち着いているのですが私より一回り下の世代なので、「七色仮面」(だとしたら)のインパクトはイマイチだったのでしょう。
 翌日Kさんから電話がありました。「次の日に行ってみたんですが、残ったレコードは全部ゴミに出したらしいです。」何という…。
 それからが大変でした。はっきり「七色仮面」と確認出来たわけでもないのに、「そんな名前だった」の一言がどうしても耳から離れません。どんなジャケットなのだろう。実写ジャケか…。Kさんに訊いても、「ジャケットはよく思い出せないんです。」あまりに真剣な私の表情に、いい加減なことはとても言えない雰囲気があったのでしょう。噂でしか聞いたことのない“まだ見ぬレコード”への思慕は募るばかり。一度でもお目にかかりたい。Kさんにはその後も会うたびに、「どこかで見つけて来てよ。」「ゴミのルート辿ってみるとか。」と、しつこく声かけていました。そんなモードがしばらく続き、そのうち年も明けてしまいました。忘れもしません、何と初夢は「七色仮面」の映像でした。

 年が明けてしばらくしたある日、Kさんがレコードを手にしてお店に入って来ました。
「里葉さん、見つけてきましたよ。」と1枚のドーナツ盤を差し出しました。「七色仮面の歌」でした。「わ~、凄い!どこにあったん!!??」
「リサイクル屋に顔出したら、1万円で売ってたので迷わず買ってきました。」
どこでどう流れて、私に辿り着いたのか。あの時ほど己の強運と言おうか、レコードに対する執念を思い知ったことはありませんでした。

里葉風流(さとばふうる)