中古レコード屋の店主 里葉風流の「レア盤発掘に王道なし」 #017 ここはどこ、わたしは誰 前篇 ~アイビーズ/「メイビー・トゥモロウ」<東芝AP-8719>

 これまでのレコード買取で、それこそ数限りないレア盤と出会ってきました。出張買取では県外に出向くことも多いのですが、事前にリスト等で確認していたものとは別に予期せぬレア盤が出てきたりすると思わず声が出てしまいます。

 かつて東京のコレクター(リアルタイマー)宅でペラ・ジャケLPの塊からロネッツの帯付(MH盤)を見つけた時は、心底感動して「コレ本当に凄いですよ!」と何度連呼したことか。決していい人振るわけではないのですが、“ポーカー・フェイスを決め込む”なんて器用なことが出来ないのです。と言うかしたくない。同じレコード大好き人間同士、とにかく受けた感動をそのまま相手に伝えたいのです(まあ簡単に言ってしまえば、いわゆる「直情型」というタイプです)。でも予想を遥かに超えたメガレア級の盤に思いがけず遭遇したりすると、人間って本当に声さえ出なくなります。四半世紀に及ぶ買取人生の中で、かつてそんなことが2度ほどありました。

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 ジスボーイをオープンする前の、リサイクル業をしながら通販レコード・オークションをしてた頃の話です。当時はまだ子供が小学生だった関係で、子供会とかの行事にも顔を出すことが多かった時期でした。
 ある日「バザーをするので開催資金が必要らしい」と女房から聞き、軽い気持ちで「それじゃあ、みんなに声かけてレコード集めてみたらどう?」と提案してみました。既にCDが主流になってた時期で、あっという間に子供会のリーダーから5~60枚のレコードが持ち込まれました。

「あまり期待出来ないかもしれませんが、精一杯査定してみますよ。」と伝えると、リーダーは「幾らかでもなればいいんですがね。預けておきますから結果が出たら連絡して下さい。」と言って帰られました。一仕事終えて、持ち込まれたレコードのことを想い出し梱包を解いてみると、案の定出て来たものはアリス等のニュー・ミュージック系がメインで、それにクラシックや演歌系が加わり、さらにリーダース・ダイジェストのセットものが混在するといった内容。やっぱりなあ、と溜息洩らしながら残りの2~3枚に差し掛かった時、突如アイビーズの帯付がヌ~と出て来ました。一瞬何が何だかわけが解らず、その場ですっかり固まってしまいました。そして私のとった行動は、(今から考えても笑えるんですが)隠しカメラがないかと周りをチラっと見回したのです。別にタレントでも何でもないのに、何故かその瞬間ドッキリ番組の仕掛けが頭をよぎったわけですね。たまたまなのでしょうが、帯が右側に巻いてあったのが今でも強烈に印象に残っています。

 当時はまだ駆け出しのディーラーで、レア盤を入手したら確実にオークション・リストに掲載していたのですが、ちょうど渋谷パルコへの初出店が控えていたため、目玉としてこのアイビーズを出すことにしました。
 市場にはそれまでほとんど出たことのないアイテムでした。子供会にはリスクも考えつつ慎重にウン万円支払ったものの(大喜びしてもらいました)、幾らで値付けしていいものやらと本当に悩みました。結局ゴロ合わせで息子の誕生日O月O日と同じOO万円で強気に(と思った)値付けして出品しましたが、何と初日に即売れしてしまいました。
 あの遠い日から今日まで、その後この帯付には一度もお目にかかれていません。

里葉風流(さとばふうる)