中古レコード屋の店主 里葉風流の「レア盤発掘に王道なし」 #018 ここはどこ、わたしは誰 後篇 ~エルヴィス・プレスリー/「ゴールデン・レコード第2輯」<LS-5129>

 エルヴィス・プレスリー。ジョン、ポール、ジョージ、リチャード(リンゴ)の四人が束になっても負けそうな存在感あるネーミング。キングの名にふさわしく、当然のことながらレコード・コレクターも世界中に点在しています。その日本盤に関しては、“デビュー・シングルのジャケットが未発見”“最古の帯が未確定”という二点において、エルヴィスほどミステリアスで謎に包まれたアーティストはいないと言えるでしょう。

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 4年前のことでした。「ここ8年で集めたレコード3000枚を売りたい」との電話がかかってきました。枚数にはそれなりのインパクトがあったものの、“ここ8年で集めた”というのがいただけません。ネット時代に突入して既に久しく、かつてよくあった中古店での“とんでもない拾い物”は激減しているのが現状です。

 「ここが“隠れ家”と呼んでいるところです。」案内された別宅の2階には、“ここ8年で集めた”LPがぎっしり並べられてありました。「ほう、なかなか壮観ですね~」と先方を持ち上げながらも、“0 x 3000枚=0円”の最悪の数式が頭をよぎるのでした。「ここがクラシックで、これから左がジャズの棚です。」と説明を受けながらLPを取り出しているうちに、あることに気付きました。ほとんどすべてのLPが購入したビニールに封入されたままの状態で、それも105円、315円、525円の3種類のシールが大半を占めていたのです。一瞬何かがときめきました。「安く買える!」ではなく(その要素が若干あったのは否定しませんが)、「拾い物があるかもしれない!」というトキメキだったのです。要するにそのコレクションは、中古レコード専門店ではなくフリーマーケットやリサイクル・ショップのようなところで買われた、いわば「価値が分からない人がほぼ均一に値付けした商品」の山だったのです。

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 こんなことって起こるものなのですね。それはエルヴィスの塊を物色している時でした。一瞬何が何だか分かりませんでした。正に「これは何?」「ここは何処?」「あなたは誰?」状態。「これ」には私がかつて見たことのない帯が付いており、とんでもないオーラを放っていました。とっさに何か罠にハメられたのではと冷気を背中に感じ、後ろで見ている「あなた」の視線が怖くて直ぐに振り返ることも出来ません。一呼吸おいてそーっと後ろに目をやると、そこには怪訝な表情で私を見つめているレコード・オヤジの姿が。安心しきった私は、せきを切ったように「これ、凄いですよ!本当にとんでもないですよ!」と連呼するのでした。ビニールに添付された購入価格の100倍以上で提示した私の買取額に、両手を挙げて「バンザイ!!」と狂喜の雄叫びを繰り返すNさんでした。売った方も買った方も幸せ。これだからレコード買取はやめられません。そのLPこそが、それまで確認されてた「ア・デイト・ウィズ・エルヴィス」<LS-5162>(1959年11月発売)の記録を半年も更新するエルヴィス最古の帯付でした。

*「エルヴィス最古の帯」追記

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「ゴールデン・レコード第2輯」<LS-5129>(59年5月発売)の帯付発見から1年後に、同一番号の「ゴールデン・レコード 下巻」の帯付が発見されオークション・リストにも掲載する。第1輯に相当する「ゴールデン・レコード」<LS-5119>(59年3月発売、帯未発見)に第1輯の表記がないため、その後発売されたものがいきなり「下巻」とは考え難く、「第2輯」が現時点で確認されている最古の帯であると思われる(「第2輯」発売後に上巻・下巻セットで発売された可能性が高い)。

里葉風流(さとばふうる)