「レコードプレーヤーの話が必要だよね」季刊・アナログ編集部/浅田 #008  実は大きな理由がある! レコード再生機器の価格の話

 レコードを聴こうと思った時に、一番最初にぶち当たる壁。それはレコードプレーヤーだ。
 かつてレコード再生を楽しんでいたリターナーの方であれば、「プレーヤーがきちんと動作するのか」ということ、そしてこれからレコード再生を始める方となれば「そもそもプレーヤーがない」というところである。

 いずれにしても確実に選択肢に「新しいプレーヤーを導入する」が挙がってくるだろう。
 その時に驚くことが価格レンジの広さである。安いものでは1万円前後、高いものになれば10万円、20万円というのはざらで、中には何百万円、何千万円という値付けがされたモデルすらある。
 そのいずれも、レコードを再生するという本質は共通だ。この値段差は音質のためにどうしたアプローチを踏んでいるか、がポイントとなっている。

 本連載で何度も書いていることではあるが、レコード再生は溝に刻まれた信号をピックアップする。このピックアップという作業をどこまで正確にトレースできるか、ということをどのように追求しているかによて当然開発/生産プロセスが大きく変わってくるのだ。

 写真はもっとも手軽に購入できるプレーヤーのひとつ、デノンのDP-29F(¥14,500/税別)と高級オーディオの中で昨今急速にスタンダード化しているラックスマンのPD-171A(¥495,000/税別)である。その価格差は30倍以上。この2つにはどのような違いがあるのだうか。

01_DP-29F

02_PD-171A

 DP-29Fの場合はボディはアルミダイキャストを採用し、重量は2.8kg。フォノイコライザーを内蔵したことに加え、さらにはカートリッジまで付属し、針の上げ下ろしもフルオートで動作する。その一方で、ラックスマンPD-171Aはアルミ削りだしの筐体を採用した25.4kg、フォノイコライザーもなければカートリッジもない。つまり、レコードプレーヤーだけだ。
 この違いはそれぞれのコンセプトと音質的アプローチの違いにほかならない。

 そもそもレコード再生は、振動が大敵である。振動によって溝のトレース性能が落ちることはもちろん、増幅の際に振動まで増幅してしまいそれがノイズとなるからだ。
 そのため、ラックスマンPD-171Aでは、レコードを載せるプラッターだけで5kg、またモーターもプラッターから離して回転させる仕組みを採る。
 振動には、置いている場所の振動や電磁波などによる要因にくわえ、回転させるためのモーターからのノイズも大きく関係する。だからこそ、そもそもの物性を重くして防振のアプローチを採ったり、モーターそのものも低ノイズなものを別途開発したりするのだ。
 また、さまざまな機能を投入することで、回路自体が発生したノイズも乗ってくる。出来る限りこの振動やノイズの影響を排除するために、単機能に徹した構造を採っているのが高級機に多く見られる特徴である。

 こうしたこだわりを重ねていくと、コストの安い汎用のパーツのみで構成するのは難しい。高級機では、そのレコードプレーヤーにとってどのような素材が適しているのか、吟味に吟味を重ねた上で新たにパーツを特注することさえ普通に行われる(時にはハンドメイドすらざらだ)。必然的に汎用パーツを使用できる箇所は減るため、コストが上がり、それが価格に反映されてくるわけだ。
 レコード再生におけるメカニズムは、ちょっとしたパーツひとつが音質を大きく左右することはさほど珍しいことではなく、多くの場合は価格と音質がリニアに比例していることが多い。

 一方のデノンの場合は、そもそもの開発コンセプトが違う。より多くのひとに使ってもらうということを想定しているため、出来る限り価格を下げるためのアプローチが取られひとつの筐体に多くの機能を盛り込むことを優先している。その結果、非常に手軽に、自宅に持ち帰ってから簡単な接続で再生できるようになっているのだ。

 もちろん、これら双方のプレーヤーにはそれぞれのメリットがある。音質を取るのか、手軽さをとるのか。これがレコードプレーヤー選びの大きな分かれ道となる。しかし、高いモデルには高いだけの理由がある。
 本誌としては、「いつか本当のレコードのサウンドを」と憧れを持って、レコード再生を楽しんでいただきたいと常日頃から考えている。

季刊・アナログ編集部 浅田