「レコードプレーヤーの話が必要だよね」季刊・アナログ編集部/浅田 #012

   レコードプレーヤーにみる近年の「一般的」なレコード再生

 音楽再生の時代がデジタルとなって以降、何度か訪れているレコードブーム。
しかし、昨今のレコードへの注目度の高さを見ていると、どうやらこれまでのブームともひと味ちがう大きな盛り上がりを見せているようにも感じている。

 その大きな要因のひとつは、音楽流通手段の主流がCDやSACDのようないわゆるフィジカル・メディアから「モノ」としての実態がないデジタル配信へと変化していることである。
「モノ」がないということは、「音楽をかける動作」という視覚的な部分が省略されるということになる。

 しかし、数あるフィジカル・メディアの中でも、アナログとなるレコード再生はなによりも視覚的な楽しみも大きい。30cm×30cmの盤を針が音を拾う姿は、目で見ても楽しめるものだ。しかし、CDですら「そっけない」や「ブラックボックスで何をしているか分からない」と言われていたデジタル再生は、いまや実態のない「データ」に置き換わっている。
 そこに、この視覚的な魅力はない。
 だからこそ、いまのレコードの盛り上がりというのは、音のみならず「視覚からくる日常の充実」というライフスタイル的な要素が大きいものなのかもしれない。

 このことは、昨今各社から登場しているレコードプレーヤーを見てもよく分かる。

 例えば、オーストリアのプロジェクトというブランド。
 同社は世界でも巨大規模を誇るレコード関連専業ブランドで、そのバリエーションは実に幅広い。その中でも、最近日本でも発売が開始されたElemental Esprit(¥OPEN・予想実売価格¥63,000前後)は、プラッターサイズ+アルファという必要最小限のデザインを採用。日本でも欧米でも、家庭の中心となるリビングでは機器の設置場所が限られるものだが、そんな限られた環境でもレコード再生を味わうための工夫がなされているのだ。また、ボックスコンポーネントと呼ばれる手のひらサイズのアンプやフォノイコライザーもラインアップしているのも、現代の住環境を考慮したものといえるだろう。

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Pro-Ject「Elemental Esprit」(¥OPEN・予想実売価格¥63,000前後)

 また、昨今爆発的なヒットを飛ばしているION AudioのArchive LP(¥9,980/税込)もライフスタイルという側面が強いプレーヤーだ。このArchive LPは、いまや現代の必需品となったスマートフォンやタブレットデバイスとの親和性も非常に考慮されているほか、スピーカーまで搭載したことによって、必要最小限のスペースでレコードが持つ視覚的な楽しみも味わえるようになっている。

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ION Audio「Archive LP」(¥9,980/税込)

 こうしてデザイン性や設置性に溢れたライフスタイル寄りの製品を見ていくと、「レコードに針を落とすことで生まれる独特の雰囲気を、日常生活にいかにして溶けこませるか」という課題に各社挑戦を続けている印象を持つ。これからレコードを始める場合も、はやりポイントになるのはまず「家庭に置ける」か「家庭に置けない」か。
 しかし、本連載にて何度も述べている通り、レコード再生は「目で見える部分」と「手で触れる部分」が音のクオリティを大きく左右する。
 できるだけ、自分の目で現物に触れ、納得のできるレコードプレーヤーを選ぶことをおすすめしたい。

季刊・アナログ編集部 浅田