「レコードプレーヤーの話が必要だよね」季刊・アナログ編集部/浅田 #016

   第三のカートリッジ方式

 「レコードプレーヤー」と言っておきながら、今回もカートリッジのお話。
 カートリッジといえばMM型、MC型の2タイプが主流となっているが(両者の違いについてはこちらを参照)、ここにきて「第3の方式」がオーディオ市場にて注目を集めている。「第3の」と書くとビールの話のように新しい方式に思うかもしれないが、そうではない。いまから約40年ほど前にトリオや東芝が発売していた実績のある「光電型」という方式である。

※厳密に言えば現在もカートリッジの方式は多々あるが、ここではそれぞれの互換性を考慮してMM、MCと分類した上での「第3」とする。

 「光カートリッジ」ともいわれる光電型は、その文字通り針の動きを光で感知する方式のカートリッジだ。ただし、ここで勘違いしてはいけないのが、CD等の非接触デジタルメディアとは大きく異なり、あくまで針先が盤面をトレースした上で、アナログ信号を光で検出するということ。また、一時期に話題を呼んだ「レーザーターンテーブル」のように非接触で音が再生されるわけではない。
 つまり、あくまでレコードの盤面を針がトレースして音が再生されるものであり、一般的なレコード再生と変わらない仕組みである。

 一般的なMM型やMC型のカートリッジは内部にマグネットを持つため、音質的な影響を与える磁界が必ず発生することになる。また、レコード盤からの信号をコイルの速度に比例して変化させるため、周波数帯域によって出力電圧にバラつきが発生することは避けられないものとなっていた。そのためイコライザーで修正を大きくかける必要があり、処理プロセスが増える結果となるわけだ。

 しかし、光電型は振幅に比例して出力電圧を取り出す仕組みとなる。磁界の速度でなくあくまで盤面に刻まれた振幅を基準とするため、どの周波数帯域もフラットに出力することが可能となり、そのためイコライザーでの修正はほとんど必要としない。つまり、針先でピックアップした信号を、そのままの形で、かつ少ない信号処理で伝送することができる優位性の高い方式だったのだ。なお、光電型の音は極めてフラットで鮮度が高いサウンドと評価されている。
ちなみに、この光電型のカートリッジは、電源供給が必要となることもあり、現代のミニコンポなどについているフォノ入力端子では使用することができず、専用のイコライザーが必要となる。

 いずれにしても特性的に優位な構造を実現できるとされた「光電型」は、なぜレコード再生のメインとならなかったのか。それは構造上の要となる「光」が大きく関係する。

 光電型が登場した40年ほど前、光源には白色ランプを使用していた。白色ランプはかなり高い温度で発熱する光源だ。この熱がダンパーやカンチレバーといったカートリッジの核となるパーツに影響を及ぼすことに加え、波長によるS/N面でも不利となるなどさまざまな問題を誘発していたのである。つまり、当時の技術力では音質的に優位と分かっていても、理想的なものを作り上げることはできなかったのである。

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光電型カートリッジを現在最先端の技術をもって蘇らせたDS Audioの「DS001」(カートリッジ¥150,000+専用イコライザー¥200,000)

 やがて、レコード再生の舞台から姿を消した光電型が再び登場したのは、2013年。その沈黙を破ったブランドが、光学関連機器を開発してきた株式会社デジタルストリームという日本企業で、DS Audioというブランド名で製品化。特に注目すべきは光源に発熱が極めて少ない高機能なLEDを使用したこと。このことにより光電型の問題点を大きくクリアした上で、理想的な特性を持つカートリッジの開発に成功したのだ。
 なお、このDS Audioは、現時点で光電型を発売する世界唯一のブランド。いまや、日本のみならず、アナログ大国であるドイツを始めとした世界各国のオーディオファイルから驚異的なまでの評価を獲得している。

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上位モデルとなるDS-W1(カートリッジ¥400,000+専用イコライザー¥400,000)は、世界的にもレコードのハイファイ再生に厳しいドイツの最有力オーディオ誌「Stereo」誌で最高評価を獲得。瞬く間に日本を代表するカートリッジのひとつとしての評価を確立した

 光電型のカートリッジは決して安いものではなく、まだまだ選択肢も限られている。しかしながら、もし可能であればオーディオショップ等で一度その音に触れてみて欲しい。レコード再生にまたひとつ新しい価値観が見つかるはずだ。

季刊・アナログ編集部 浅田