「レコードプレーヤーの話が必要だよね」季刊・アナログ編集部/浅田 #023

   ついに開発をスタートしたレコード再生の象徴的存在

 レコードプレーヤーにおけるテクニクスのブランドロゴは、もはや象徴とも言える存在だ。おそらく、「世界で最も売れたレコードプレーヤー」であろうSL-1200シリーズや、1969年に発売されたにもかかわらず、いまなお多くのオーディオ愛好家を抱えるターンテーブルSP-10シリーズなど、テクニクスはこれまでレコード再生を象徴するような製品を多数開発してきた。

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発売後、実に45年以上を経たいまでも、多くのオーディオ愛好家を魅了するテクニクスのSP-10シリーズ

 テクニクスのブランド自体は昨年劇的な復活を果たし、多くの音楽ファンやオーディオファンを魅了していることはご存知のとおりである。しかし、テクニクスが現在発売しているのは、主にデジタルを中心としたオーディオ機器だ。「なぜ、レコードプレーヤーを作らないの?」とSNS等に書き込まれたことを記憶している方も多いだろう。だからこそ、この9月に開催されたドイツ・ベルリンにて開催されたIFAで、ターンテーブルの開発を発表したことは、大きなニュースとなった。

 現在、開発中として発表されているのが、アルミ製の筐体に粛々と回転するモーターがマウントされるものだ。テクニクスは長らくダイレクトドライブ方式によるプレーヤーを開発してきたが、このターンテーブルに関してもその流れは引き継がれると発表されている。実はこのモーター部こそが、テクニクスのターンテーブルを語るに欠かせない重要なポイントとなる。

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今年開催されたIFAを皮切りに各所で展示されている、テクニクスが開発中の最新ターンテーブルのプロトタイプ。2016年度の発売を目指しているという

 冒頭に登場したSP-10は、当時としては最先端技術となったダイレクトドライブを世界に先駆け採用したプレーヤーだった。ベルトドライブやアイドラードライブとは大きく異なり、モーター自身がレコードと同じスピードで回転するこの方式は、それまでのモーターとプラッターで生じていた回転差によるノイズを抑えることに成功したこともさることながら、なによりも圧倒的な回転安定性を実現していた。モーターの立ち上がり/立ち下がりも実にスピーディーで、使い勝手の面で大きなアドバンテージを持っていることも特徴となる。こうしたSP-10は、当時のターンテーブルとしては驚異的な性能を実現し、多くの音楽ファンの心を掴んだことは言うまでもない。

 その後、テクニクスのモーターは改良に改良が重ねられ、後にDJユースとしてクラブシーンを熱狂させることとなるSL-1200シリーズへと受け継がれていく。
 レコードを置いてボタン一つでクイックに定速へ回転させることができ、また耐久性も強く壊れにくい。発売を終了したいまでもSL-1200が比類なき存在感を示していることには、こうしたモーターの完成度も大きく関係している。

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SL-1200MK5Gの時には、ビス一本まで徹底的に展開したディスプレイも用意された。最近開催されるオーディオショウでは、ふたたびこのディスプレイが登場し話題を呼んでいる。写真は当時搭載されたDDモーター

 ちなみに、現在となってはレコードの回転数に特化した回転を行うモーターを専用に作ることは、極めてハードルが高い。現時点ではまだまだ開発中のため詳細は明かされていないが、テクニクスのアイコンのひとつとなる優れたダイレクトドライブ用モーターの開発だけみても、相当な力のこもったターンテーブルとなることは間違いない。先般幕張メッセにて開催されたCEATECのカンファレンスでは、「伝統のダイレクト・ドライブを進化させながら、BDで培った制御技術も組み合わせている」と語るなど、いままでのターンテーブルからさらなる進化を目指すことも公言している。
 2016年度の発売を目指して開発が進められている新生テクニクスのターンテーブル。ぜひ、その動向に注目して欲しい。

季刊・アナログ編集部 浅田