歴代インタビュー PLAYBACK 4 アナログ的世界を俯瞰するHARRY HOSONOの音楽を巡る旅/細野晴臣

『レコードマップ’07-’08』掲載(抜粋)

レコードマップ'07-'08

2007年――秋川雅史「千の風になって」が年間1 位を記録。流行語大賞は「ハニカミ王子」。
 細野氏は、同年9月にソロアルバム「FLYING SAUCER 1947」をリリースした。近年では、2011年に名盤「HOSONO HOUSE」以来38年振りとなる全曲ボーカルアルバム「HoSoNoVa」を発売。オリジナル新曲の数々に加え、20世紀ポップスの名曲カバーも収録している。
 

ディラン、バッファロー、FEN

自分で最初に買ったレコードは、小学6年のときで、テレビ映画『ローハイド』の映画音楽でした。レコードを買う楽しみはそこから今にいたるまで止まらないわけです。
一番レコードを聴いたのは、はっぴいえんどの頃。その前のエイプリル・フール時代から聞いていたサイケデリックでいくつか好きなバンドがありました。サンフランシスコのモビー・グレープというロックバンドと、ロサンジェルスのバッファロー・スプリングフィールド、それにバーズなどがいて、その中心はボブ・ディランですね。モビー・グレープとバッファローの2 つのバンドに直接影響を受けて、コピーしたりしていましたから。当時、新宿にOZAWAという中古レコード店があって、そこでディランの『ブロンド・オン・ブロンド』を買った記憶が鮮明にあります。
友人の大瀧詠一君が新宿の帝都無線で僕が欲しがっていたバッファローのアルバムを見つけたと電話をくれて「番をしているから今すぐ買いに来い!」と。駆けつけたら、ちゃんと番をしてくれていました(笑)。
当時、音楽の情報源はほとんどラジオ、FENでした。バンド名とかアルバムタイトルとか真剣に聞いていましたよ。今でも音楽を聴いていいと思ったものは、その瞬間に影響を受けます。
レコードを通していっぱい勉強させてもらった先生は、チャック・レイニーです。彼はありとあらゆるセッションに参加しているベーシストで、音質の選び方やフィンガリング、音・リズムのとり方など、聴いて覚えました。
 

アナログの良さを残した最終形

2007年2月に発売した4枚組BOXセット『ハリー細野 クラウン・イヤーズ1974-1977』は、2年ほど前にクラウンの人からつくりたいというオファーを受けて実現したもので、クラウンではこれまで何度かCD化はしています。
アナログのオリジナル盤『泰安洋行』は、今でもみんな音がいいと言うんですよ。僕もそう思うので、今回はアナログ盤よりいい音にしようとリマスタリングしました。アナログの良さを残した、これが最終形ですね。
音楽というのは不思議なもので、制作しているときのことはつい昨日のような感じです。制作と制作の間はすべて過去なんですが、音楽に関する限り、間を省いてつながっているんです。オリジナル盤で聴いていた方もぜひCDで聴いてみてください。
 

この時代にレコードを守るのは、絶滅種を保護するのに近い

こういう時代にレコード文化を守っているというのは、ある意味、地球環境を守るとか、絶滅種を保護するのと近い大事な仕事だと思います。人類の財産ですから、いいものは僕も買いに行きたいなと思います。
僕がそうなんですが、目的をもって探すとなかなか見つからないので、ぶらっとレコード店に立ち寄って、そこで出会ったアルバムを買うというのがとても楽しいと思います。アナログ盤には、対面できる、出会いがある。そういう買い方をぜひお薦めします。それはCD にはない世界ですから。
アナログの中古盤は、聴いていた人の気持ちもそこに入っているので、手に取った瞬間、「あっ、これ良さそうだな」と思う瞬間があります。そういう音楽との接し方はとてもいいと思います。